罪深い私
昨日、「忘れるひと」の事件は、経管栄養の管が、何かのはずみではずれてしまって苦しんだらしい。
喉を傷つけたらしく、今日行くと、口元にうっすらと一筋の血のあとがあった。
胃まで届いている管が、中途半端に抜けて途中に引っかかっていたら、それは苦しいに違いない。
今日は唾を飲み込んでも喉が痛いとずっと言っている。
なんて残酷なことをするのだろう。
前の病院のときは、経管栄養についてどうしますか、とこちらの意向を聞かれたので、しないで下さい、と言った。
食欲がなくて衰えるならそれもしかたがないではないか、そう覚悟を決めていたから。
今度の病院では、なんの相談もなく管が入っていた。
私は、「忘れるひと」に1日でも長く生き延びてほしくて、NOと言えずにそのままにしておいた。
お陰で今回の「忘れるひと」の苦悶の原因をつくってしまった。
喉にいつも異物があって、気持ち悪い、苦しいと言っていた。
忘れることが、どんなに不安で、心細いものか、やっとこのごろ真に理解できたような気がして、やさしい娘になれたのに、今度は、私にも手の下しようのない、もっと具体的な身体の苦痛に悩まされているのだ。
今日も、私が行くと、車椅子に乗せてくださったので、ロビーに行った。
4、5人の人を集めて栄養講座をやっていた。
私が居眠りしているのに、「忘れるひと」は目を見開いて聞いていた。
何故塩分の取りすぎが、身体に良くないか。
ナトリウムから塩分のみ算出する方法。
標準体重の計算の仕方。等々。
私は「忘れるひと」のために、少しも料理に注意を払わなかった。
むしろ、「忘れるひと」と七華ちゃん向きと、二重の食事の支度の面倒くささだけを煩わしく思っていた。
今、経管栄養をやめてくださいと言うべきかどうか迷っている。
こんなことなら、イロウの方がよかったのかと考えたり・・・
年齢を考えれば、何もしなくていいと思ったり・・・
一生のうちで、こんな役回りが私に来るとは考えてもみなかった。
さらなる罪を負うことになるのか。
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